自動売買ソフトウェア販売は投資助言サービスか?

【執筆】株式会社トリロジー
【登録】財務省近畿財務局長(金商)第372号
【加入】日本投資顧問業協会 会員番号022-00269
「FXの自動売買ソフト」と「投資助言サービス」は、どちらも投資家の取引を支援する仕組みです。しかし、金融商品取引法上の位置づけは同じではありません。
完成した固定仕様の自動売買ソフトを販売し、購入者が提供者から継続的な情報や支援を受けることなく使用する場合には、一般的なソフトウェア販売として整理できることがあります。
一方、ソフトウェアの提供後に、売買条件、パラメータ、ロット、稼働時間、損切り、利確などについて修正・更新・説明を行えば、その実態は単なるソフトウェア保守ではなく、投資助言に近づきます。
特に慎重な判断が必要なのが、「バグ修正」「不具合対応」「無償アップデート」「メンテナンス」と呼ばれる変更です。
一般的なソフトウェア開発では、予定していた動作に戻す作業は、単なる不具合修正と考えられるでしょう。しかし、EAでは、わずかなコード変更でも、注文の有無、売買方向、取引数量、発注時刻、損切り幅、保有ポジション数、必要証拠金、最終的な損益などが変わります。
そのため、提供者が「バグ修正である」「当初仕様に戻しただけである」と説明しても、実際のトレードに影響する変更を、直ちに登録不要のソフトウェア保守と判断することはできません。
登録実務や所管当局との照会を踏まえると、登録不要と判断できる範囲は、一般に想像されるよりも限定的です。
明らかな誤植など、トレードに影響しないことが客観的に明白な修正を除き、売買・損益・リスクに影響する修正、更新、設定説明、運用支援は、原則として投資助言として扱う必要があります。
登録不要性が明白でない行為を、登録不要側に分類すべきではありません。
自動売買ソフト(EA)とは
EA(Expert Advisor)とは、あらかじめプログラムされたルールに従って、FXの売買注文を自動的に行うコンピュータプログラムです。
EAには、一般に次のような処理が組み込まれています。
- 新規注文の判定
- 買い・売りの選択
- 取引数量の計算
- 損切り・利益確定
- 追加注文
- 保有ポジションの管理
- 決済注文の実行
- 稼働時間や取引対象の制御
利用者が相場を見続けていなくても、あらかじめ組み込まれた条件が成立すると、EAが自動的に注文を出します。
ただし、EAがコンピュータプログラムであるという理由だけで、その販売、更新、修正、設定支援のすべてが「単なるソフトウェア提供」となるわけではありません。
金融庁の監督指針では、誰でも随時購入でき、購入者が投資分析アルゴリズムやその他の機能を確認して選択できるソフトウェアについては、投資助言・代理業に該当しない場合があるとされています。
その一方で、ソフトウェアの利用に当たり、販売者等から継続的に投資情報、データその他のサポートを受ける必要がある場合には、登録が必要となる場合があることも示されています。(金融庁)
したがって、登録の要否は、「EA」という名称や「ソフトウェア販売」という契約形式だけでは決まりません。
次のような要素を含む、サービス全体の実態を見る必要があります。
- 売買ロジックや機能の内容
- 購入者が購入前に確認できる情報
- 納品後の修正や更新
- パラメータやデータの継続配信
- 個別の設定支援
- 相場状況に応じた情報提供
- 提供者による遠隔変更
- 顧客が投資判断を行う余地
- 直接・間接の報酬体系
- 特定FX会社への口座開設や取引との結びつき
「修正料金を受け取っていない」「アップデートは無料である」という事情だけでも、投資助言性や対価性を否定することはできません。
有料EAの販売代金、会費、取引量に応じた報酬など、別の収益経路に修正・更新の対価が含まれている可能性があるためです。
投資助言サービスとは

投資助言サービスとは、金融商品の価値等の分析に基づく投資判断について助言を行い、その助言に対して報酬を支払うことを約する契約に基づいて提供されるサービスです。
金融商品取引法上の投資判断には、単に「買うか、売るか」だけでなく、次のような事項が含まれます。
- 取引する金融商品や通貨ペア
- 買い・売りの方向
- 取引数量
- 注文価格
- 注文方法
- エントリーや決済の時期
- 損切り・利益確定の条件
- デリバティブ取引の具体的な内容
これらについて、金融商品の価値や相場状況の分析に基づく助言を業として行う場合は、投資助言・代理業の登録が問題になります。
金融商品取引法は、助言を行うことを約し、その相手方が報酬を支払うことを約する契約を投資顧問契約として規定しています。(金融庁)
投資助言サービスでは、提供された情報を採用するかどうか、どの取引を実行するかという最終的な判断は、原則として顧客自身が行います。
これに対し、提供者が最終的な投資判断と投資権限を引き受け、顧客に代わって発注する場合には、投資助言ではなく投資運用業の登録が問題になります。
実際に、提供者が管理する自動売買システムを介して顧客口座へ直接発注していた事案では、顧客から投資判断を一任されているとして、無登録の投資運用業に該当すると判断されています。(金融庁)
EAの単純販売と投資助言の境界

EAの提供が一般的なソフトウェア販売にとどまるか、投資助言に当たるかは、商品名や契約書の表題ではなく、提供の実態によって判断されます。
登録不要のソフトウェア販売として整理できるのは、少なくとも次の条件が明白な場合に限ると考えるのが安全です。
- 完成済みの固定仕様である
- 誰でも同じ条件で購入できる
- 購入者が機能やアルゴリズムを確認して選べる
- 納品後に売買ロジックが更新されない
- 相場に応じたパラメータが配信されない
- 個別の運用助言が行われない
- 継続的な投資情報を受けなくても利用できる
- 提供者が遠隔で設定や発注を変更しない
- 特定FX会社での取引を成立させるための媒介行為がない
これらの条件から外れ、販売後も提供者の判断や情報がEAの売買内容に反映される場合には、単純なソフトウェア販売とはいいにくくなります。
証券取引等監視委員会は、提供者側の取引口座を継続的に参照し、同様の注文を発注する自動売買ソフトを販売するとともに、サーバーの稼働管理等を継続していた事案について、投資助言・代理業に該当すると判断しています。(金融庁)
「バグ修正」なら登録不要とは限らない

EAにおける重要な論点の一つが、納品後の不具合・バグ修正です。
提供者が、
- 新しいロジックを追加したわけではない
- 当初予定していた仕様に戻しただけである
- プログラム上のミスを修正しただけである
と説明する場合があります。
しかし、その説明だけで登録不要性を担保することは困難です。
当初の仕様や開発時の意図について、顧客や当局などの第三者が次の点を完全に確認することは容易ではありません。
- 当初仕様が本当にその内容だったか
- 仕様書がいつ作成されたか
- 仕様書が事後的に変更されていないか
- 修正が純粋な復元だけであるか
- 成績改善の意図が含まれていないか
- 相場状況を見て条件を変更していないか
- 顧客に示した仕様と内部仕様が一致していたか
結局、「当初仕様への復元」という説明は、開発者本人の説明に依存しやすく、外部から客観的に担保することが難しい性質を持ちます。
そのため、修正が実際の売買、損益またはリスクに影響する場合には、「バグ修正」「初期不良対応」「仕様復元」と呼ばれていても、登録不要のソフトウェア保守として扱うべきではありません。
重要なのは、修正前の動作が正しかったかではなく、修正によって顧客の取引内容や結果が変わるかという点です。
証券取引等監視委員会の公表事例でも、自動売買ソフトの月額使用料の一部が、ソフトを開発し、バージョンアップやバグ修正を直接行っていた無登録業者に支払われていた事実などを踏まえ、実質的な投資顧問契約の関係が認定されています。(金融庁)
登録不要と整理できる修正は極めて限定的
登録不要のソフトウェア保守として整理できるのは、取引ロジックや注文処理から完全に独立し、トレードに影響しないことが明白な変更に限られます。
| 修正内容 | 登録要否の考え方 |
|---|---|
| 画面上の明らかな誤字・脱字 | 登録不要と整理しやすい |
| マニュアル上の明らかな誤植 | 登録不要と整理しやすい |
| 会社名・連絡先・著作権表示の変更 | 登録不要と整理しやすい |
| 表示色・文字サイズ・画面配置のみの変更 | 売買処理に影響しない場合に限る |
| パラメータの表示名のみの変更 | 内部変数、既定値、計算結果、読込先が一切変わらない場合に限る |
| ライセンス認証の変更 | 売買ロジックや稼働条件に影響しない場合に限る |
| 口座縛りの対象口座変更 | 売買条件や注文処理に影響しない場合に限る |
たとえば、パラメータ名だけを変更したように見えても、内部変数との対応関係、既定値、読込先が変われば、実際の売買結果が変化する可能性があります。
その場合は、表示上の修正とはいえません。
口座縛りやライセンス認証についても同様です。利用可能な口座番号だけを変更し、取引条件やロジックに一切影響しないのであれば、管理機能の変更として整理できます。
一方、認証状態に応じてロット、通貨ペア、稼働時間、注文条件などが変わる場合には、登録不要の保守とは整理できません。
修正前後のコード、設定値、実行結果を比較する記録は、運用上の確認資料になります。しかし、記録が存在することだけで登録不要性が当然に認められるわけではありません。
完全にトレードへの影響がないと確認できない変更を、登録不要側へ分類すべきではありません。
投資助言として扱う必要がある修正
次のような変更は、「バグ修正」「初期不良対応」「仕様調整」「アップデート」といった名称であっても、売買・損益・リスクに影響するため、投資助言として管理すべき領域です。
| 修正・サポート内容 | 実務上の整理 |
|---|---|
| エントリー条件の修正 | 投資助言 |
| 決済条件の修正 | 投資助言 |
| ロット計算の修正 | 投資助言 |
| 資金管理・証拠金管理の修正 | 投資助言 |
| 損切り・利確の修正 | 投資助言 |
| トレーリング処理の修正 | 投資助言 |
| 最大保有数の修正 | 投資助言 |
| ナンピン間隔・追加注文条件の修正 | 投資助言 |
| 稼働時間・曜日の修正 | 投資助言 |
| 夏時間・冬時間への対応 | 投資助言 |
| 経済指標回避機能の修正 | 投資助言 |
| 通貨ペア・時間足・取引対象の変更 | 投資助言 |
| インジケーター計算の修正 | 投資助言 |
| 売買判定処理の修正 | 投資助言 |
| スプレッドフィルターの修正 | 投資助言 |
| スリッページフィルターの修正 | 投資助言 |
| ボラティリティフィルターの修正 | 投資助言 |
| 注文再送処理の修正 | 投資助言 |
| 約定確認処理の修正 | 投資助言 |
| 重複発注の修正 | 投資助言 |
| 発注失敗への対応 | 投資助言 |
| 3桁・5桁レートへの対応 | 投資助言 |
| FX会社ごとの仕様への対応 | 投資助言 |
| MT4・MT5更新に伴う売買処理の変更 | 投資助言 |
| バックテスト結果を踏まえた変更 | 投資助言 |
| 運用成績を踏まえた変更 | 投資助言 |
| 相場環境に応じた変更 | 投資助言 |
| 顧客ごとの個別設定 | 投資助言 |
| パラメータ・ロジックの継続配布 | 投資助言 |
一般的なソフトウェア開発では、重複発注や注文失敗の修正は、典型的なバグ修正と考えられるでしょう。
しかし、EAの場合、重複発注を修正すると、次の項目が変わります。
- 注文数量
- 保有ポジション数
- 必要証拠金
- 最大損失
- ロスカットまでの距離
- 最終的な利益・損失
そのため、トレードへの実質的な影響は明らかです。
同様に、時差、夏時間、レートの桁数、注文再送など、一見すると技術的に見える修正も、注文の有無、価格、時期または数量を変える以上、単なる保守とは整理すべきではありません。
操作説明と投資助言の違い

EAの利用者に操作方法を説明することが、すべて投資助言になるわけではありません。
登録不要の一般的な操作案内として整理できるのは、次のような機械的説明です。
- ファイルの保存場所
- インストール方法
- 画面上のボタンの位置
- 入力欄への文字や数字の入力方法
- ログイン画面の開き方
- マニュアル上の誤植訂正
一方、設定項目の意味、取引結果への影響、推奨値、使い分けについて説明すれば、具体的な投資判断に関する助言になります。
たとえば、次の説明は単なる操作説明とはいえません。
- 「この資金額なら0.1ロットにしてください」
- 「現在の相場ではEAを停止してください」
- 「米雇用統計の前には稼働させない方がよいです」
- 「損失を抑えるため、損切り幅を変更してください」
- 「今月はこの時間帯だけ稼働してください」
- 「この通貨ペアでは設定値を変えてください」
- 「ドローダウンが増えたため、保有数を減らしてください」
これらは、取引数量、売買時期、取引条件、リスク管理などに関する具体的な情報です。
「設定方法の説明」という形式であっても、実質的に投資結果へ影響する説明であれば、投資助言として扱う必要があります。
対価性は直接の利用料だけで判断しない

投資助言・代理業の登録要否を検討する際、対価性は、利用者から「助言料」「EA代金」「サポート料」という名目で直接金銭を受け取っているかだけでは判断できません。
EAの販売、配布、修正、設定支援、口座開設の案内、利用継続、取引の発生などと経済的利益との間に実質的な結びつきがある場合には、別名目や第三者を介していても、対価性がないとは判断すべきではありません。
確認すべき収益経路には、たとえば次のものがあります。
- EAの販売代金
- 月額利用料
- 保守費・サポート費
- オンラインサロンやコミュニティの会費
- 教材・講座・セミナーの受講料
- コンサルティング料
- 広告費・業務委託料
- FX会社から支払われる口座開設報酬
- 顧客の取引量に応じたIB報酬やリベート
- スプレッドや取引手数料の分配
- 関連会社や海外法人を経由する報酬
- EA利用者の取引継続に連動するその他の経済的利益
したがって、次のような説明だけで、対価性を否定することは困難です。
- EAは無料で配布している
- バグ修正には料金を請求していない
- 利用者から助言料を受け取っていない
- 報酬はFX会社から受け取っている
- 海外法人が報酬を受け取っている
- 支払い名目はコミュニティ会費である
- 教材代やコンサルティング料として受領している
- 広告費や業務委託料として処理している
名目や送金経路が異なっていても、EAの提供や利用を起点として経済的利益が発生しているのであれば、サービス全体としての対価性を検討する必要があります。
個々のサポートが無償でも、EA販売代金や月額会費、取引量連動報酬などの別経路から利益を得る仕組みがあれば、そのサポートがサービス全体から独立した無償行為とは限りません。
別法人・第三者を介しても実態は分断されない
関連会社、業務委託先、海外法人などを介して報酬を受け取る場合も、法人や契約を分けたことだけで、EAビジネスとの経済的な一体性が失われるわけではありません。
証券取引等監視委員会の公表事例では、自社開発のFX自動売買ソフトを販売し、特定の海外FX業者の口座開設を支援した事業者が、顧客の取引量に応じた報酬を海外法人経由で受け取っていました。
この事案では、ソフトの開発・販売、口座開設支援、顧客の継続的なFX取引、取引量に応じた報酬という一連の行為が実質的に評価され、無登録で店頭デリバティブ取引の媒介を行っていたと判断されています。(金融庁)
この事例が示しているのは、別法人や海外法人を経由して報酬を受け取っても、行為と収益の実質的な関係まで分断できるわけではないという点です。
なお、IB報酬や取引量連動報酬が存在する場合、問題となる登録区分は投資助言・代理業だけとは限りません。
行為の内容によっては、次の論点も生じます。
- 店頭デリバティブ取引の媒介
- 第一種金融商品取引業
- 投資顧問契約締結の代理・媒介
- 投資助言・代理業
- 投資運用業
- 広告・勧誘規制
- 利益相反管理
したがって、「利用者から助言料を受け取っていないため、投資助言・代理業の登録は不要である」という結論にはできません。
仮に投資顧問契約上の報酬該当性に議論が残る場合でも、取引媒介など、別の金融商品取引業の登録が問題になる可能性があります。
対価性を確認する際の実務上の視点
対価性の有無を検討する際には、個別の請求書だけを見るのではなく、EAビジネスに関係する資金の流れを全体として確認する必要があります。
| 確認項目 | 確認すべき内容 |
|---|---|
| 支払者 | 利用者、FX会社、関連会社、広告主、海外法人など |
| 受取者 | EA販売者、開発者、関係者、委託先、関連法人など |
| 名目 | EA代、会費、教材費、広告費、紹介料、委託料など |
| 算定方法 | 定額、口座開設数、取引量、スプレッド、利益額など |
| 発生条件 | EA購入、口座開設、EA稼働、取引継続など |
| 経済的受益者 | 最終的に誰が利益を得ているか |
| サービスとの関係 | EAの提供・修正・助言と収益が結びついているか |
| 法人間の関係 | 資本関係、役員兼任、業務委託、利益分配など |
EA提供と収益との間に実質的な関係があるにもかかわらず、請求名目や受取法人だけを変更して「対価性はない」と評価することは、登録実務上は困難です。
利用者から直接助言料を受け取っていなくても、EAの提供・利用・取引に関連して、別名目または迂回経路から経済的利益を得る構造があれば、対価性がないとは判断すべきではありません。
無料サポートでも登録の問題は残る
投資助言業務では、報酬を支払うことを約する契約に基づく助言であることが要件となります。
ただし、個々の修正やサポートについて料金を請求していないことと、サービス全体に対価性がないことは同じではありません。
たとえば、次のような場合です。
- 有料EAに無償アップデートが付属している
- 月額会費にEA配布と設定支援が含まれている
- 教材購入者だけがEAを利用できる
- 無料EAの利用には特定FX会社の口座開設が必要である
- EAの取引量に応じて提供者がIB報酬を受け取る
- 関連会社がサポート料やコンサルティング料を受け取る
- 海外法人を経由して報酬を受け取る
これらの場合、個々の修正が無料であっても、EAの提供、修正、設定支援、取引誘導を含む一連のサービスに経済的利益が結びついています。
したがって、「無料である」という一部分だけを取り出して、登録不要と判断すべきではありません。
クラウド配信・遠隔変更にはさらに注意が必要

クラウドや外部サーバーを通じてEAの設定、パラメータ、売買ロジックを配信するサービスも、単なるソフトウェア保守とは整理できません。
| サービス内容 | 実務上の整理 |
|---|---|
| 設定変更案を配信し、顧客が採否を決める | 投資助言 |
| 顧客ごとに推奨設定を配信する | 投資助言 |
| 相場状況に応じてパラメータを更新する | 投資助言 |
| 売買ロジックを継続的に更新する | 投資助言 |
| 顧客の判断を経ず設定を遠隔変更する | 投資運用業に該当する可能性 |
| 提供者の判断で顧客口座へ直接発注する | 投資運用業に該当する可能性 |
変更内容を受け取った顧客が採用するかどうかを判断できる場合には、投資助言として整理されます。
一方、顧客が内容を確認・選択することなく、提供者の判断で設定が変更され、その設定によって注文が実行される場合には、最終的な投資判断を提供者が行っていると評価される可能性があります。
この場合は、投資助言を超え、投資運用業の登録が問題になります。
なぜこの違いを知っておく必要があるのか
無登録で投資助言や投資運用を行う事業者を利用したからといって、利用者が契約しただけで直ちに金融商品取引法違反者になるわけではありません。
しかし、無登録業者については、登録業者に求められる次のような管理態勢が確認できません。
- 顧客管理
- 広告審査
- 助言内容の記録・保存
- 顧客情報の管理
- 苦情・トラブルへの対応
- 法令等遵守態勢
- 内部管理・監査態勢
EAを選ぶ際には、バックテストや過去の運用成績だけでなく、納品後のサービス内容と報酬構造も確認する必要があります。
特に、次の点は重要な確認項目です。
- 納品後にどのような修正が行われるか
- バグ修正の名目で取引結果が変わらないか
- パラメータが継続的に配信されるか
- 相場に応じた設定変更が行われるか
- 個別のロットや稼働時間が提案されるか
- 遠隔で設定が変更されるか
- 顧客口座へ自動的に発注されるか
- 特定FX会社での口座開設が利用条件になっていないか
- 取引量に応じたIB報酬が発生していないか
- 関連会社や海外法人への支払いがないか
- 提供者が必要な金融商品取引業の登録を受けているか
固定されたEAを一度だけ販売しているように見えても、提供後にトレードへ影響する修正や情報提供が継続し、別経路から報酬を得ているのであれば、サービス全体として登録要否を検討する必要があります。
まとめ
自動売買ソフトと投資助言サービスの違いは、「EAというプログラムを販売しているか」だけでは判断できません。
金融商品取引法上の評価は、EAの販売方法だけでなく、納品後の修正、設定変更、パラメータ配信、相場情報、個別サポート、遠隔操作、口座開設支援、報酬体系などを含む、サービス全体の実態によって判断されます。
完成済み・固定仕様のEAを販売し、提供後に投資情報や運用支援を行わない場合には、ソフトウェア販売として整理できることがあります。
しかし、登録不要と判断できる範囲は極めて限定的です。
登録不要のソフトウェア保守として整理できるのは、明らかな誤植、表示名、著作権表示、取引処理と完全に独立した認証情報の変更など、トレードに影響しないことが明白なものに限られます。
売買の有無、方向、数量、時期、価格、損切り、利確、保有期間、必要証拠金、損益その他の取引結果に影響する修正、更新、設定説明、運用支援は、「バグ修正」「初期不良対応」「当初仕様への復元」などの名称を問わず、実務上は投資助言として扱う必要があります。
利用者から直接助言料を受け取っていなくても、EAの提供や利用に関連して、販売代金、会費、教材費、サポート料、紹介料、IB報酬、取引量連動報酬、関連会社への支払いその他の経済的利益を得る構造があれば、対価性がないとは判断すべきではありません。
登録不要性が明確でない行為を、登録不要側に分類すべきではありません。
また、特定FX会社への口座開設や取引を成立させ、その取引量に応じた報酬を得る場合には、投資助言・代理業だけでなく、店頭デリバティブ取引の媒介として第一種金融商品取引業の登録が問題となる可能性があります。
提供者が顧客の判断を経ずに設定を変更したり、顧客口座へ直接発注したりする場合には、投資助言ではなく投資運用業の登録が問題となる可能性もあります。
EAを選ぶ際には、運用成績だけでなく、提供後の修正内容、設定サポート、遠隔変更の有無、口座開設との結びつき、直接・間接の報酬体系、提供事業者の登録状況まで確認することが重要です。
引用元・参考資料
- 金融商品取引法
- 金融庁『金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針』
- 金融庁『投資運用業等 登録手続ガイドブック』
- 証券取引等監視委員会『ウxxx・xxxxx・ジャパン株式会社及びxxxxステイ合同会社に対する検査結果に基づく勧告』
- 証券取引等監視委員会『ユxxxプロジェクト合同会社に対する検査結果に基づく勧告』
- 証券取引等監視委員会『株式会社xxxxマスターに対する検査結果に基づく勧告』
- 証券取引等監視委員会『株式会社インベストメントxxxxに対する検査結果に基づく勧告』
- 金融庁『金融商品取引業者登録一覧』
免責事項
本記事は、自動売買ソフトと投資助言サービスの境界について、公表されている法令、監督指針、行政上の事例および登録実務を踏まえ、一般的な判断基準を整理したものです。
個別のサービスが投資助言・代理業、第一種金融商品取引業または投資運用業に該当するかどうかは、契約内容、販売方法、修正内容、提供後のサポート、顧客の判断の有無、口座開設への関与、直接・間接の報酬体系、発注権限など、サービス全体の実態に基づいて判断されます。
登録不要性が明確でないサービスを提供する場合には、無登録のまま提供を開始せず、事前に所管財務局や金融商品取引法に詳しい専門家へ確認することが重要です。










