EAと無登録助言(金商法違反)の関係について

2024年11月25日

記事の信頼性担保

【執筆】株式会社トリロジー
【登録】財務省近畿財務局長(金商)第372号
【加入】日本投資顧問業協会 会員番号022-00269
【説明】投資家の皆様への継続支援を通じて金融立国に貢献します。

Trilogy

EAビジネスは金融商品取引法(以下、金商法)違反と僅差の関係にあるため注意が必要です。本記事では、特にEA開発者が金商法違反を回避できるよう「無登録助言」について解説します。EAビジネスを展開される場合は、金商法の遵守にご留意いただけますと幸いです。

金商法遵守の重要性

金商法の遵守は投資家保護の視点から非常に重要です。また、金商法違反により検挙されると反社会的勢力として登録されるため、その者の人生は詰みます。このような背景から、金融ビジネスを展開する者は皆、金商法を遵守して活動することが重要です。

EA開発者が留意すべき金商法違反行為は「無登録営業」「無登録助言」「誇大広告」等が主となります。金融ビジネスを展開する場合、財務省管轄下の各地方財務局に対し、業許可の登録をする必要があります(いわゆる「金融庁登録」)。金融庁に登録のない無免許での金融ビジネスの多くは金商法違反です。無登録営業については、当社の行動指針とともに以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。

投資助言・代理業とは

投資助言・代理業には、次の2つの種類があります。(日本投資顧問業協会のHPより抜粋)

投資助言業務
顧客である投資者に対して投資顧問(助言)契約に基づき、有価証券の価値等または金融商品の価値等の分析に基づく投資判断に関し、投資者から報酬を得て、投資者のために助言を行う業務です。最終的な投資判断は投資者自身が行います。
代理・媒介業務
投資運用業者または投資助言・代理業者から投資一任契約または投資顧問(助言)契約の締結に関する業務を委託された業者が、投資者との契約締結の代理・媒介を行う業務です。
登録
投資助言・代理業を行うには、金融商品取引法の規定により、内閣総理大臣の登録を受けなければ行うことはできません(登録している業者には○○財務局長(金商)第××××号という登録番号が与えられます)。いわゆる「金融庁登録」です。
項目投資助言業務代理業務
対象行為金融商品の売買や価値に関する助言金融商品の契約締結を代理・執行
顧客との関係投資判断のサポート顧客の代わりに投資契約を締結
関与の程度間接的に投資判断を支援顧客の取引契約に関与
買い時・売り時を助言する契約締結を代行、契約内容の説明
登録の必要性必須(金融庁登録が必要)必須(金融庁登録が必要)
(参考)投資助言・代理業務について

一般的には馴染みが薄い、投資顧問契約又は投資一任契約の締結の代理・媒介業務(いわゆる代理業務)とは、顧客が他社との間で投資顧問契約や投資一任契約(ファンドラップ・特定金銭信託・ラップ口座等の投資顧問業務)を締結する際に、契約の間に入って代理したり媒介(契約を成立させようと尽力する行為)をしたりする業務です。「他の投資顧問業者の代理店業務」と考えるとわかりやすいでしょう。

EA開発者による無登録助言について

FX領域における無登録助言による摘発強化の流れは、2024年11月にミラートレード(いわゆるコピートレード、コピトレ)が無登録助言として検挙されたことから、今後も強化されていくことが予測されます。有識者の多くは、無登録営業(特に違法IB)の摘発が近いと予想していたと思われますが、無登録助言の検挙が先行した形です。2023~24年に明るみになった一連の特殊詐欺(海外FX詐欺)事件が影響した可能性もありますが、コピートレードが無登録助言として検挙された事実は、多くの違法なEA関係者に法の包囲網が接近している事態を意味しています。EA開発者が犯しがちな無登録助言は、「EAによるコピートレード」と「EAの販売サポート」の2つが主であり、その片方が摘発されたことになります。

コピートレードと無登録助言の関係について

ミラートレード(コピートレード)は、他者の取引を自動的に模倣するシステムで、初心者でもプロの投資家と同様の取引が可能とされ注目を集めています。取引にEAが利用されることは多く、EA開発者はコピートレードと密接な関係にあります。しかし、この仕組みを提供する際には、金商法に基づき財務局への登録(金融庁登録)が必要です。無登録での営業や投資助言・代理業務を行うことは違法であり、摘発・検挙の対象となります。

無登録助言とコピートレードの関係

コピートレードを提供する際、提供者が投資家に対し、「投資家に代わって自動的に取引を行う仕組み」を提供することになり、特定の取引を推奨する形となるため、投資助言行為に該当することは既知の事実でした。今回の検挙により、コピートレードには、投資助言・代理業の登録が求められることが改めて世に周知され、国民の多くが金融庁無登録のコピートレードの違法性を再認識することになりました。

無登録でのミラートレード提供の摘発が意味すること

2024年11月、東京都内の男性ら4人が、無登録でミラートレードを提供し、約1500人から総額約16億円を集めたとして、ミラートレード(コピートレード)としては初めて、金商法違反(無登録助言)の疑いで逮捕されました。このような無登録でのコピートレードの提供は、投資家保護の観点からも重大な問題とされ、今後も無登録助言として厳しく取り締まられることが予測されます。本件で注目すべきは、コピートレードのプラットフォームを開発した技術者(プログラマー?)も検挙の対象になっていると読み取れることです。摘発対象となる金商法違反行為の「幇助者」とみなせる範囲は私どもの予想を超えてきています。

EAサポートと無登録助言の関係について

EAのサポートと無登録助言の関係は、EA開発者の視点から見ると、ミラートレード(コピートレード)よりも難解です。コピートレードは自分の開発したEAのトレードがそのまま顧客の口座にコピーされるのが普通であるため助言行為を連想しやすいですが、EA販売に伴うサポートの場合、金融庁に登録された投資助言・代理業者が販売プラットフォームを運営している場合もあり、EA開発者(出品者)は自身の違法行為に気付きにくいことがあります。

投資助言契約の必要性

EA販売に伴うサポートを行う場合、EA購入者との投資助言契約が必須です。投資助言契約の選択肢としては、

  1. 販売プラットフォームの運営会社が、EA購入者と投資助言契約を結ぶ
  2. EA開発者(出品者)が、EA購入者と投資助言契約を結ぶ

この2パターンです。

①販売プラットフォームの運営会社とEA購入者が投資助言契約を結ぶ場合

この場合、まず、販売プラットフォームの運営会社が、財務省管轄下の地方財務局に金融商品取引業の「投資助言・代理業者」として登録される必要があります(いわゆる「金融庁登録」)。その上で、EA開発者はその運営会社の「重要な使用人」として届け出がなされ、「契約締結前交付書面」と「契約締結時交付書面」には分析・助言者として氏名が明示された上で、EA購入者と運営会社は投資助言契約を締結することになります。

②EA開発者とEA購入者が投資助言契約を結ぶ場合

①のプロセスに乗れない場合、EA開発者(出品者)自身が「投資助言・代理業者」としての登録を受ける必要があります。本記事の執筆時点では、EA開発者が個人で「投資助言・代理業者」としての登録を受けることは不可能です(一人では人的要件を満たせられないため)。よって、EA開発者の個人が合法的にEAサポートをする場合、①のプロセスに乗るか、別の投資助言・代理業者に所属した上で購入者と投資助言契約を締結する以外に選択肢はないのが現状です。

事例の考察

現在、金融庁登録の投資助言・代理業者が運営するEA販売プラットフォームには「EA EXPO」と「GogoJungle(通称:ゴゴジャン)」があります。

EA EXPOについて

「EA EXPO」は、株式会社トリロジー(財務省 近畿財務局長(金商)第372号)が運営する販売プラットフォームです。EA EXPO には、以下の説明があります。

弊社での出品者登録には2種類の方法があります。ひとつは弊社に入社しユーザー対応を自身で行う方法です。もう一つは、弊社に商品と必要な情報を提出することで、弊社在籍の助言者にサポートを委託する方法です。

EA EXPO 出品申込の流れ
https://ea-exposition.com/about-ea-expo/application

この記載から、EA EXPOでは、次の2パターンの選択肢を置くことで金商法を遵守(無登録助言を回避)していることが分かります。

  1. EA開発者は、株式会社トリロジーに入社後、『重要な使用人としての届け出』を近畿財務局に出されることによって、分析・助言者として顧客をサポートをする。
  2. 入社することなく、株式会社トリロジーにサポートを委託する(EA開発者(出品者)自身はサポートしない)。

どちらの場合でも、トリロジー社とEA購入者との間で投資助言契約が締結されることになり、➊の場合は、契約締結前交付書面と契約締結時交付書面にEA開発者の氏名が分析・助言者として明示されます。

GogoJungleについて

「GogoJungle」は、株式会社ゴゴジャン(財務省 関東財務局長(金商)第1960号)が運営する販売プラットフォームです。本記事の執筆時点で、GogoJungleには以下の説明があります。

第8条(本件サイトにおける取引)
1.会員が当社のサーバを通して行う出品者との取引は、会員と出品者の直接取引となります。当社は、当該取引について出品者となる場合を除き、取引の当事者とはならず、取引に関する責任は負いません。したがって、取引に際し万一トラブルが生じた際には、会員と出品者との間で解決していただくことになります。
2.シグナルを受信するための受信チケットの対価は、当社通信設備利用料であり、会員から当社に支払われるものです。

GogoJungle 利用規約 第8条(本件サイトにおける取引)
https://www.gogojungle.co.jp/terms/service

第9条(免責事項)
1.当社のサービスは、本件サイトをWebサイトとしてその時点の、あるがままの状態でしか提供しておりません。本件サイトは、本件サイトの運営、または本件サイトに掲載されている情報、コンテンツ、素材、商品に関し、明示的であるか黙示的であるかにかかわらず、いかなる種類の表明も保証もいたしません。お客様は、ご自分の責任で本件サイトをご利用になり当社には一切の保証および責任がないことを予め理解および承諾したものとみなします。
2.出品者、出品者との取引内容・取扱商品・サービス・ページ上の記載内容・各種コンテンツの内容、出品者における個人情報の取扱いなどにつきましては、当該出品者に直接お問合せください。これらに関する内容の真偽、正確性、最新性、有用性、信頼性、適法性、第三者の権利を侵害していないことなどについて、当社は一切保証いたしません。
3.通信回線やコンピュータなどの障害によるシステムの中断・遅滞・中止・データの消失、データへの不正アクセスにより生じた損害、その他当社のサービスに関して会員に生じた損害について、当社は一切責任を負わないものとします。
4.当社は、当社のウェブページ・サーバ・ドメインなどから送られるメール・コンテンツに、コンピューター・ウィルスなどの有害なものが含まれていないことを保証いたしません。
5.当社は会員および出品者に対し、適宜情報提供やアドバイスを行うことがありますが、それにより責任を負うものではありません。
6.会員が本規約等に違反したことによって生じた損害については、当社は一切責任を負いません。

GogoJungle 利用規約 第9条(免責事項)
https://www.gogojungle.co.jp/terms/service 

この記載から、ゴゴジャン社はプラットフォームを提供しているのみで、金商法の遵守(無登録助言の回避)は出品者に委ねられていることが分かります。よって、ゴゴジャン社に出品するEA開発者が金商法を遵守するために取れる選択肢は、次の2点になります。

  1. EA開発者(出品者)と顧客が、金商法を遵守した投資助言契約を結ぶ
  2. そもそもEAのサポートをしない(ソフトウェア販売の扱い)

この2点から逸脱すると、そのEA開発者(出品者)は金商法違反となります。

EAのサポートとは何か

ソフトウェアとしてEAを販売する場合、「初期不良によるプログラムの修正」は認められています。逆に言い換えれば、EAのサポートとしては「初期不良によるプログラムの修正」以外の大部分が該当することになります。以下、投資助言契約が必要となるEAのサポートの例を挙げます。

  1. 初期不良以外のバージョンアップ(何度もバージョンアップすることはNG)
  2. 不特定多数への対応とはみなせない解説・質疑応答(ログイン者への対応など)
  3. パラメータセットファイルの更新・配布(バージョンアップと同じ扱い)
  4. ロット設定・稼働時間等、運用上必要な情報の示唆(実態に応じて判断)
  5. クラウドシステムを通じてEAと通信し、設定の変更をかける場合等

金商法を遵守した投資助言契約を結ぶことなく、これらのEAサポートを行うことは、無登録助言となり違法です。

無登録助言による被害者の方へ

無登録助言等の金商法違反による損失は、投資は自己責任という理解の範囲外である可能性があります。言い換えれば、犯罪行為の被害者という位置づけです。心当たりのある方は、各窓口へご相談ください。

投資から逸脱するとなると損害賠償請求も視野に入ります。EA開発者が負担することになる賠償額は想像を絶するものになりかねず、被害者と加害者の両者および社会全体にとって重大な事案に発展しかねないという懸念があるため注意が必要です。

  • 違法業者だと知らずに購入したので、そもそも契約は無効である
  • 発生した損害も請求する

この「違法性の担保」「損害の発生」という2点を確保できれば、弁護士は受ける可能性が高く、負けることも考えにくいと言えます。被害者の方の心情としては、弁護士費用と時間がかかりますので、二の足を踏むことになると思いますが、お金もあるし時間もあるから取り返そうという方が現れれば、違法業者に対して一石を投じることができるでしょう。

EA開発者への注意喚起

金商法違反で摘発される場合、利用者に損失が発生しているというのが過去のパターンです。 仮にEAを違法に販売し、そのEAで損失が出ている場合、摘発される可能性があることを当事者は念頭に置く必要があります。 金融庁の登録業者であれば、契約締結前交付書面と契約締結時交付書面における「投資結果は投資家に帰属」「元本が保証されない」という旨の記載により「投資家の自己責任」が明確化されています。一方、違法な投資商品となれば、投資家の自己責任にはできないということ(そもそも違法な販売方法を取っていること)に気づく必要があります。損失を出していないEAを探す方が難しいのではないでしょうか。

繰り返しになりますが、損失を出した投資家から、以下の争点で訴訟を起こされた場合、

  • 違法業者だと知らずに購入したので、そもそも契約は無効である
  • 発生した損害も請求する

違法業者は負ける可能性が非常に濃厚です。集団訴訟になれば莫大な損害賠償請求になることが予想されますが、大丈夫でしょうか。

金融庁登録業者および各メディア等の皆様へのお願い

金商法違反者の拡大が投資詐欺の温床になっていることは容易に予想できます。発信力・影響力のある皆様におかれましては、金商法違反者(疑われる者を含む)とのビジネスをくれぐれも避けていただけますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

まとめ

金商法を遵守することは、投資家保護のみならず、金融ビジネスを展開する者にとって、自分や家族、ビジネスパートナー等を守るために重要です。金商法違反に対する罰則は厳しいものになることを覚悟する必要があります。以下、「行政書士トーラス総合法務事務所様」の記載を引用します。

いわゆる金融商品取引業を、財務局の登録を受けずに無登録で営業した場合、罰則は、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する、となっています(金融商品取引法第197条の2)。また、法人・団体に対しては5億円以下の罰金が科されます(金融商品取引法第207条)。また、無登録営業を行った際には、無登録で金融商品取引業を行うものとして、金融庁のホームページで公開されます。そうなると金融機関等の反社会的勢力のリストや信用情報機関のリストに「反社会的勢力」として登録されるとされています。そのため、無登録営業で公表された場合には、法人の口座を強制閉鎖されたり、代表者の金融機関の個人口座も開設できなくなったりするのはもちろんのこと、住宅ローンを借りることもできなくなり、賃貸住宅すら審査で拒否されるようになります。よって、社会的には、暴力団同様とみなされ、経済活動から事実上排除されることになります。

行政書士トーラス総合法務事務所

金商法違反(特に、無登録助言)は、摘発されるまで本人も顧客の多くも気づいていない可能性が考えられ、重大な問題になりつつあります。金商法違反は、何人かで渡れば怖くないという次元の話でもなく、事態を甘く見てはいけません。金商法違反は気付いたタイミングで即座に手を引く、これが極めて重要です。

Best-AMMA

EA EAPO