為替レートの推移と変動要因のポイント
*本記事は法律で認められた金融庁登録業者により書かれています。
✅ | 為替レートの変動要因を知ることは、FXトレードを有利にするために重要です。 |
✅ | 本記事では、近年の為替レートの推移を俯瞰的に観察し、通貨ペアの特徴とレートの変動要因について解説します。 |
✅ | 筆者が経験した、サブプライムショック・リーマンショックから東日本大震災、アベノミクスのような多彩な難局を振り返り、皆様と共有したいと思います。 |
✅ | チャートを並べて比較し、為替レートの変動メカニズムの全体像を知りたい方は必見です。 |
【執筆】株式会社トリロジー
【登録】財務省近畿財務局長(金商)第372号
【加入】日本投資顧問業協会 会員番号022-00269
【説明】投資家の皆様への継続支援を通じて金融立国に貢献します。
本記事では、下記の目次の内容を記載します。
為替レートの推移
各通貨ペアの2003年以降の為替レートの推移について、最高値・最安値と共に示します。近年最大の金融イベントであるリーマンショック(2008年9月)以降の為替レートの推移をみることにより、通貨の性格を簡単に知ることができます。
ドル円とクロス円(ユーロ円、ポンド円、豪ドル円など)の為替レート推移
2003年以降のドル円とクロス円レートの推移の特徴は、サブプライムショック(2007年)に始まった円高トレンドがリーマンショックを経て、2012年初頭まで続き、日銀による金融緩和を中心とするアベノミクスにより円安方向へV字回復したことです。円高の底を伺ったタイミングは東日本大震災もありました。
サブプライムショック、リーマンショックのような金融危機により円が買われて円高になり、アベノミクスのような景気刺激策によって好景気になることで円が売られて円安になることは、逃避通貨としての円の立場を明確に示すものになりました。
ドル円以外のドルストレート(ユーロドル、ポンドドル、ドルスイスなど)の為替レート推移
2003年以降のドルストレートの為替レートの推移の特徴は、ドルが買われドル高になっていることですが、ドルスイスについては、スイスフランが代表的な逃避通貨であったことからも、綱引きの結果スイスフラン高を目指すことになりました。
その他主要通貨ペアの為替レートの推移
為替レートの推移から分かること
リーマンショック以降の為替レートの推移から明らかに言えることは、逃避通貨(通貨の安全性)の強さという意味では、円、ドル、スイスフランが強く、その中でも円が抜きん出て強いということになります。
ドル円は、間違いなく安定しています。リーマンショック以降円高に振れましたが、結局、リーマンショック前まで戻すことができました。
資源国通貨(豪ドル、カナダドル)は、金融危機の際に売られますが、地力があるので時間かけて元に戻ることができます。
一方、ポンドは、リーマンショック前と比べて半値くらいであり、戻すことができていません。ポンドは値動きが激しいことが特徴ですので短期売買に向いており、長期保有する場合のリスクを示しているとも言えるでしょう。
ユーロスイス、ペッグの衝撃
為替レート推移に激震を与えたリーマンショック以降、スイスフラン高に悩まされていたスイス中央銀行は2011年9月から無制限介入を実行し、1ユーロ=1.2スイスフランにペッグすることを宣言しました。スイス中銀が人為的にスイスフランを売りユーロを買い支えるわけです。
この手のペッグは、切り崩されることを歴史が証明しており、案の定、2015年1月15日にペッグは解消され、スイスフランショックと呼ばれる歴史的な為替レートの変動を引き起こすことになりました。
スイスフラン円の為替レートはわずか数分の間に50円以上の急騰から30円以上の下落に転じ、その後の数分間は円単位で相場が乱高下したことは記憶に新しい衝撃です。
そして、このスイスフランショックにより、大手FX会社のアルパリは破綻することになります。
為替レートの変動要因
為替レートは、多岐に渡る要因の結果として変動しますので、代表的なものをピックアップして解説します。
景気
その国が好景気になれば、その国の通貨は買われ、不景気なら売られるというがセオリーです。好景気になると株価、不動産価値、海外からの投資や事業進出が上昇するため、その国の価値が上がります。
したがって、好景気の国の通貨価値(為替レート)は上がっていくことになります。しかし、景気はその他要因に比べて遅効性が高く、為替レートの変動要因としての影響度は低いものになっています。
日本の場合、景気の良し悪しよりも、世界情勢に起因する逃避通貨としての意味合いが強く、世界的な金融危機においては日本国内が不景気でも、円が買われて円高になり、輸出がダメージを受けるという悪循環に陥ることがよくあります。
金利
当該国通貨の金利が対象国通貨の金利に比べて高い場合、当該通貨は買われ、低い場合は売られるのがセオリーです。
しかし、この金利差(内外金利差)が為替レートにダイレクトに影響を及ぼすものでもありません。金利が高いということは、その国の貨幣価値が下落(=物価上昇)しているということに等しく、インフレ率に目を向けて判断する必要があります。
したがって、内外金利差を比較する場合は、表面上の金利ではなく、名目金利からインフレ率を差し引いた、実質金利で比較することが重要です。
貿易収支
貿易黒字が大きくなると、レパトリ*によりその国の為替レートは上昇します。逆に、貿易赤字は、その国の為替レートを下落させる要因となります。これに関する例外はほとんどありません。例えば、「現受け」は、大部分が差金決済である外国為替市場の規模からみれば、無視できるほど小さいため、影響は限定的です。
*レパトリ:レパトリエーションの略で、企業などが海外に投資していた資金を本国に戻すこと。
国際情勢
為替レートに大きな影響を与えるものとして、戦争やテロ、大国の選挙、Brexit(イギリスのEU離脱)などの国際情勢があります。
国際情勢による為替レートへの影響は、短期で収束するものから、長期に遷延するものまで多岐にわたります。東日本大震災のような地政学的リスクも為替レートに直接影響を与えます。東日本大震災の際はドル円が底を目指したように、国際情勢の為替レートへの影響は規模に比例します。
このような国際的な有事に対する逃避通貨として現在選ばれているのは、円、スイスフラン、米ドルです。力関係は、円 > スイスフラン > 米ドルとなる傾向が強いと思われます。
中央銀行による市場介入
各国の中央銀行による市場介入は、片方向に行き過ぎたと思われる自国通貨に対して、適正な水準に戻す、あるいは維持するために行われます。
市場介入には、直接介入と間接介入があります。自国の主要銀行に命じて外国為替市場で直接売買を行わせることを直接介入と言い、日銀のレートチェック、金融担当大臣のコメント発表等による口先介入を間接介入と言います。
近年では、各国が通貨安競争を展開していることもあり、直接介入は各国の理解を得にくく簡単には実行できなくなっています。
要人発言
中央銀行総裁や政府要人の発言が市場に大きな影響を与えることがあります。これらは発言の日時が明確に決まっています。市場の雲行きが怪しい場合は、重大発言があるかもしれません。
チャートポイント(テクニカル指標による影響)
市場の参加者は、ほとんどのケースにおいて重要なチャートポイント(サポートラインやレジスタンスライン)で利食いや損切を行うため、相場を短期的に大きく加速させることがあります。ラウンドナンバーと呼ばれる切りの良い数字の近辺も注意が必要です。
為替レートの推移と変動要因のポイント(まとめ)
- 為替レートの推移は各通貨の特徴を反映します。
- 金融危機等の有事の際は逃避通貨(円、スイスフラン、ドル)が買われ、資源国通貨(豪ドル、カナダドル)や新興国通貨は売られます。
- 逃避通貨の強度は、円 > スイスフラン >米ドル です
- 豪ドルとNZドルの為替レートは似た推移を示します。
- 南アフリカランドは下落傾向にある通貨です。高い政策金利はリスクの裏返しです。
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